レセプトオンライン請求義務化について


 平成20年10月26日に開催された第119回日本医師会臨時代議員会において、レセプトオンライン請求義務化に対する日医の見解を問う質問が出され、担当の中川俊男常任理事から下記のような回答が示されました。ご参照ください。

 

 日本医師会は、2001年の日医IT化宣言以来、ORCAプロジェクトなど、医療におけるIT化を積極的に推進してきました。

 しかし、オンライン請求の「完全」義務化については、地域医療崩壊につながる重大な問題であり、「完全」義務化を、「撤廃」した上で「手挙げ」で進めることを主張してきました。

 平成20年5月診療分の内容を見ると、1万2,800もの医療機関がレセプトを手書きしており、その多くは地域医療を支えるために必死で努力してきた先生たちである。日医のアンケート調査で廃院を考えている8.6%の大部分の先生たちがこういう方たちであり、IT化に対応できない医療機関は絶対に守らなければなりません。

 仮に、手上げ方式の導入が不調に終わった場合、その備えとして、次の5項目に絞って働きかけをしています。

 第一に、来年度、平成21年度の予算概算要求において、代行入力支援(システム構築等)に必要な初期費用の手当てなどを求めています。

 第二に、少数該当要件は、レセプト年1,200件とされていますが、これを大幅に緩和するように求めています。

 第三に代行請求業務の改善です。

 第四に、国保請求書、医療費助成制度などの書式を統一し電子化すること、

 そして五番目として、オンラインではなくレセプト電算処理、電子媒体を医師会などが代行送信することといった5項目であります。

 これらを受けて、今回、厚生労働省はオンライン請求について、約26億円を計上しました。このなかには、代行請求のソフト開発の経費も含まれています。

 特に代行請求の仕組みは、しっかり拡充し、診療所が従来どおりの紙レセプトによる請求で済むようにしたいと考えています。

 代行請求は厚生労働省令において、医師会のみが行えることになっておりますが、支払基金などで直接、代行入力業務などができれば、従来どおり手書きのレセプトで請求でき、現場に混乱はありません。

 ただし、この方法については、基金法や省令の改正などが必要になります。そこで、医師会から審査支払機関への業務委託についても検討中であり、代行手数料についてもできる限り安価にすべく交渉中です。

 オンライン請求になると、保険審査が強化されるのではないかというご指摘ですが、画一的な審査の問題につきましては、昭和55年の通知により、薬理作用に基づいて処方することが認められております。

 また、支払基金も平成19年6月に閣議決定された『規制改革推進のための3カ年計画』に対して、「固定点数のチェックや算定ルールのうち正否の判断が一義的に決まり得る明確なルールチェックなどはコンピューター処理するが、審査自体はオンライン化にかかわらず、個々のレセプトに即して、審査委員の臨床経験や専門・的知識に基づき判断するもの。医学的判断をシステムプログラムに置き換え、『自動化』することはできない」と述べております。

 さらに、各学会や疑義解釈委員会のご協力により、適応外処方の事例作りも進んでいるので、保険審査が急に強化されるという心配は少ないと思いますし、そのようなことが生じないように対処していきます。

 また、オンライン請求の医療機関側のメリットは、編綴作業が要らなくなるといったことぐらいで、ほとんどないと思います。

 この10月22日、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会の三師会の会長による「レセプトオンライン請求完全義務化の撤廃を求める共同声明」を、厚生労働大臣ならびに国会議員、マスコミに対して行いました。

 以上のように、さまざまなクリアすべき課題はありますが、全国各地で、オンライン請求のために、地域医療から撤退を余儀なくされる医療機関が出ることがないよう、全力で取り組む所存です。

 ぜひ、ご理解とご協力のほど、お願いします。


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